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窯を作りたい方の話をよく聞きますが、窯作りが主体になってしまい窯焚きが厳かになる人がいるようです。窯は作品を焼く為の道具で、窯が立派でもそれに合う作品を作らないと本末転倒ですよね。
私も陶芸窯作りで、かなりの時間と労力を使い、また苦労もしましたが、苦労はまた逆に楽しい事でもあります。なかなか窯作りに関する資料を見つけられずに悩む時間も多くありましたので、ここに一つの例として参考にされる方の為に今回窯作りのホームペーをアップしました。
尚、多少の陶芸関係の専門用語が入ってますので、全く窯に関して分からない方には、難しいかもしれませんが、他の陶芸関係のホームページを見て探して下さい。分かりやすいサイトがありましたらリンクさせてもらうつもりです。(参考サイト---未定)
焼成時の最高温度が1,100度で焼くのと1,300度で焼くのでは、使用出来るレンガも変わってきます。1,100度でしたら、ワンランク下のレンガを
使ったり、K型の熱伝対を使ったりと、窯作りの総コストを下げる事が可能ですが、低温用の窯で1,300度に焼きたいからといっても、レンガの収縮が高く
隙間が大きくなり窯が壊れる可能性があります。逆に、1,300度の窯でしたら、それ以下の温度で焼くのには全く支障をきたしません。
どちらの場合でも、選択するレンガは、200度から300度前後余裕ある耐火度を持ったレンガを使用するのがお薦めです。温度計の表示が1200度でも、
それは温度を読み取る為に入れた熱電対の部分的な温度で、窯の全体の温度ではありません。火口付近は1,500度位の温度に上る場合があります。ゆえに特
にバーナー周りは、さらにレンガの耐火度を上げた方がお薦めです。 現在私が使用している窯も5年程で、素焼き、本焼きで300回は超えています。最高温度は、1、240度で焼成してますが、バーナー周りは、LBK−28
(耐火温度1,500度)を使用してます。バーナーが強風式なので、部分的に温度が極端に高くなり、このレンガでも色が変色して割れています。特に使用頻
度の高い窯なら、予算が許す限り耐火度の高いレンガを使用した方が、数年でレンガを張り換える事を考えたら安くなり、また燃料の節約にもなります。
何故、窯の、高さ、奥行き、大きさ(炉内体積)が大事になるかというと、中途半端に炉床が高かったり奥行きがあると使用しずらくなります。また窯詰
めが原因で腰痛になり、陶芸を止めなければならなくなった人もいます。背が低い方で、上蓋式の背の高い窯に作品を詰めていて窯の中に落ちて怪我をした人も
います。大きな作品を焼くつもりなら、それなりに作品も重くもなり、 釉薬掛けした作品は扱いにくく、どうしても作品を持つ時は、普段荷物を持つ時とは少し違う持ち方になる事を考慮しなければいけません。
特に陶芸初心者の方は小さい窯で構わないと言う人もいますが、陶芸の腕が上達すると、すぐに欲張って作った大きめの作品が入らなくなます。または私みたい
に、何度も頻繁に焼成するハメになる人も見てます。逆に大き過ぎる窯は、窯詰めするだけの作品を作るのに数ヶ月かかってしまい、年に2、3回しか焚けなく
なります。窯焚きに慣れた人なら焼成の失敗も少ないでしょうが、特に自作窯では初めのうちは何回も失敗する覚悟をしなければなりません。窯も回数を多く焼
けば、それなりに慣れ工夫も出来ますが、窯焚きの間隔が空けば空くほど、焚き方の感覚を忘れ失敗がちになります。サンデードライバーほど事故が多いと同じ
ですね。
使用する窯の大きさを例えるならば、よく子供が出来てマイホームが小さく感じたり、また子供が独立したので家が広すぎる、なんて話を聞くのと同じように陶
芸の窯も使用頻度、目的があなたの陶芸の腕と共に将来変化します。貴方が将来どんな窯の使い方をするのかしっかり考えてから作り始めるのが理想です。少し
余裕を持った方がよいのですが、あまりに余裕があるとかえって大変になります。
友人と一緒に陶芸をするので大きい窯を買ったら、購入後すぐにその友人が転勤で引っ越してしまった話もあります。また、一緒に窯焚きしていた友人と絶縁状
態になって、一人で一窯の作品を作るのに一年かかってる話もあります。この段階で窯の大きさについて悩むなら、もう少し陶芸の事を熟知してからでも遅くは
ないと思いますよ。
マイホームを何度も建て直し出来る人もいますが、諸事情で出来ないなら最初の設計段階をしっかりしないと、窯のリフォームも家のリフォーム同様に結構高くつきます。
なかなか難しいと思いますが窯焚きも機会があれば出来るだけ勉強するのが良いでしょう。窯が作れても窯焚きが出来ないなら、目的にあった窯焚きが出来なく
なります。先程も書いたように、窯を作るのが主体ではなく、窯を使って焚くのが目的ですから、窯焚きをした事も無く見た事も無い方、そして近くに助けてく
れる方がいないなら、余程の苦労を覚悟しない限り自作窯はお薦めしません。
窯を作って、はい完成。後は何もしなくても完璧に焚けるなんて事は、ほとんどありません。少しずつ窯を焚きながら窯本体を微調整する必要が出てきます。貴
方が作った窯の事を他人に聞いても答えが出ない場合があります。これは窯焚きは焼いてみて、窯を開けて初めて分かるという宿命を持っているのでどうしよう
もありませんね。窯があっても、窯焚きの仕方が分からないが為に何十回も失敗していては、作品作りの気力も失せてしまいます。
ある程度は、バーナー、ダンパー、と作品の窯詰めの仕方で炉内温度の上下幅を調整出来ますが、この調整の仕方が分からなかったら、いくら良い窯を
作っても、窯焚き回数も増え、経験を積むまでうまく焼けないという事です。自作窯では、半分は窯自体の問題で残りの半分は窯焚きの仕方で決まります。
私も窯の焼成中、経験の深いプロパンガスでの焼成では、火の色で、酸化・還元の濃度と温度を予測する事が出来ますが、灯油窯では殆ど分かりません。ですか
ら私に灯油窯の事を聞かれても答えれません。地元の福岡地方で、都市ガスの成分が天然ガス系統の種類に切り替わった時には、随分と窯焚きに苦労された知人
の陶芸家がいます。結局、月2〜3回ペースで焚いて一年以上かかって以前の焼きの色合いと同じように還元で焚く事が出来るようになったそうです。
プロパンガス、都市ガス、天然ガス、ブタンガスとガスだけでも種類が豊富でバーナーによっては、相互に使える場合使えない場合もあります。ガスの種類も、
住む場所により入手出来ないか、または、難しくなる時がありますので調べてからバーナーを選択して下さい。それぞれ熱カロリーの違いでバーナー本数が変わ
る場合があります。
選択する時は、近所に住むガス窯を持っている窯元に聞くのが、一番早いでしょうけどね。都市ガスなどは、近くの地中のガスパイプが太くないと、必要消費量
に対応出来ない場合がありますし、ガス漏れ防止用のリミッターがついていて、窯焚きすると近所一体のガスが自動的に止まる話を聞いた事もありますので注意
して下さい。灯油バーナーでも重油を兼用して焼けるタイプもありますから、灯油で焼くのか、重油を使用するのか考えてみて下さい。
私の知っている限りでは、ガスバーナーは、バーナー本体の値段は安いが、配管・ガス料金等でコストが掛かる場合が多く、逆に灯油の方が燃料費が今の段階で
は安いが、その分バーナー自体の値段が高くなります(強風式灯油バーナーの場合のみ。)ガスバーナーでもモーター 一体型の強風式なら値段は高いですけ
ど。
ガスで還元焼成しても、余程強い還元をかけない限り、殆ど煙は出ませんが(プロパンガスしか知らない)、逆に灯油では、目にしっかりと見える位の煙
がエントツから、特に窯の焚き始めに出ます。初めの数百度までの灯油が完全に気化しない温度帯では、硫黄分が出て窯の近くにいると目がチカチカしたりしま
す。
貴方が窯を設置する場所、焚き方、生活環境等も考慮して焼成燃料を選択して下さい。
以前の生徒で、煙の出にくい灯油窯を買ってみたが、焚き方が悪いせいか窯が悪いせいか、煙がかなり出ると言ってました。周りが住宅地なので、近所の方から
洗濯物が汚れると苦情が来ないように、夏場を除く季節の夜に窯焚きをするそうです。田舎ですと、夏場はエアコンを使わずに窓を開けて寝る人が多いのを配慮
した焼き方です。
プロパンガス窯では、窯の周りに、窯の大きさにもよりますが数本のガスボンベを置く場所が必要になりますので敷地の狭い方は、置き場も考慮してみて下さい。
それから音に関して言わせてもらうと、強風式のバーナーは、結構うるさいです。窯構造・バーナー構造によりますが少ないバーナー数程、騒音がします。ガス
なら自然通風型のヴェンチュリー式を使えば静かになりますが、強風式では会話が聞き取りにくい位の騒音レベルになります。これもバーナーの種類でかなり変
わりますが、窯設置場所が人家に隣接している方は、コンクリートブロック等の厚い壁を使うとか防音ガラスを使うなど考慮して下さい。せっかく窯が出来て
も、近所から苦情が来て窯焚きを止めた話もあります。
プロパンガスと灯油のどちらの窯が安全か? と聞かれる事がありますが、どちらも安全でどちらも安全ではない、としか言い様がありません。安全を求
めるのも大事ですが、それを安全に使う事がより大事です。ガスの方が怖いからと言う人もいますが、ちゃんとガス漏れ警報機をつけて、ガスの着火を日頃から
確認すれば問題ありません。電磁弁、フレームロッド等の安全装置を組み込めばをいれれば、さらに安全性は高まります。逆に、灯油の方が安全だからと言って
使っている方で、ホースから灯油が漏れているのを気ずかずに焚いていて、窯焚き中に漏れた灯油に引火した話も聞きます。台所のガスレンジで火事を起こす人
もいるし、灯油ストーブで火事を起こす人もいます。
プロパンはプロの方が配管しますので、ガス漏れはしないと思いますが、灯油の場合は自分でホースを動かしたりも出来ますので、逆に危ないとも言えます。
最近の車は安全性が向上して、エアバックやABSが付属していますが、逆にスピードも出るし、安全だと思い込む事により、不注意で逆に多くに交通死亡事故も招いています。
要するに、機械自体の性能ではなく、人の意識が安全を生む事を忘れずに。
手元にデータがありませんが、私の推測では、ガス窯であれ、灯油窯であれ、より多く販売されている(使われている)窯の方が事故・火事が多いのではないでしょうか?
車でも、より多く販売している車の種類の方が事故が多いのと同じですね。車が悪いのではなくそれを使う人により問題があるのですから。
これを聞いてちょっと、と考えるなら、電気窯とか市販窯等にしたらどうでしょうか?
窯焚きには、積み重ねた経験が大事になります。
ちょっと余談になりますが、私が専門学校で講師アシスタントをしていた時に、当時では最新鋭の窯がありました。確かNASAに勤めている人が作ったとか
で、ステンレス張りの外枠にセラミックファイバーが内側に張ってあり、低燃費で温度ムラが無く焼ける窯だと言われました。窯には扉がついておらず電動ウイ
ンチで底面部だけを残し外枠を持ち上げて窯詰めするタイプの窯で、当時では珍しいデジタル温度計と窯中のCo2濃度を測る為の濃度計までついてました。某
研究機関のデータを元に、Co2濃度を所定温度で調整すると完全な還元焼成が出来ると言われ、データ表を片手に窯焚きした経験があります。
私が仕事としてこの窯を焚くと、窯焚きの結果は散々でした。窯開けしてみると酸化焼成では作品に還元がかかり、逆に酸化焼成のデータを元にして焼くと還元
がかかってました。あまりにこの窯と自分とに(焼成中に)違和感を感じていたので、窯に付随している温度計とCo2濃度計の電源を切り、オートンコーンを
入れて自分の感覚で窯の火の色を見ながら調整して焼いてみると、見事に自分が思っている通りに還元のかかった作品の仕上がりになりました。
窯自体が悪かったのか、元にして焼いていたデータが悪かったのか今にしては分かりませんが、人間の感覚は時には機械よりも正確だと言う事です。現在のほと
んどの窯には、デジタル温度計がついていて瞬時に温度を知る事が出来ますが、それだけを利用していると人間の感覚が退化してしまいます。昔の陶工は温度計
の存在していない時代に同じような温度で窯焚きしてたんですから。
窯焚き中に、何度か窯の中の火の色と温度計との間に違和感を感じた事があります。不思議に思い、よくよく温度計周りの配線を見ると結線部分が緩んでいて、締め治すとほぼ自分の思っていた通りの温度に正しく温度計が表示された事も数回あります。
また、台風後に窯焚きした時は、窯焚き中に絶えず違和感を感じていたのですが、この時はいろいろと調整しても治らずに焼いてみた結果、どうやらエントツ脇
のレンガが(外から見えない)はずれていて、酸化で焼くつもりだった作品に還元がかかってしまった事もあります。(ドラフト効果が自然に出来ていた。)
自作窯に限りませんが、機械に頼り過ぎずに自分の感覚を育てて窯を焚くとより自分の思い通りの焚き方をする事が可能になります。
もう一つ余談になりますが、どうやって私がこの感覚を身につけたかというと、私の大学時代に使っていた窯が、当時不景気で予算がなく温度計が修理出来ず
オートンコーンだけで焼成していました。どうしても自分の感覚でやらなければならなかったのが起因してます。初めての窯焚きがこんな風だったので、窯焚き
はそんな物だと思ってましたが、外に出てデジタル温度計なる物を見た時には、目が離せない位どきどきしながら窯焚きしたのを覚えてます。今となっては、大
学で使用した窯の温度計が壊れていた事にとても感謝してます。
さて、脱線してしまいましたが話を自作窯に戻します。自分で窯を作るには自分で何が出来るのかを知らなければなりません。日曜大工程度の事が出来る
のが最低条件ですが、貴方の周りに心底手伝ってくれる人がいるなら可能だと思います。私自身は、それ程経験がなかったので、かなり苦労しました。鉄板の枠
を作らないなら簡単ですが、私は溶接の仕方も知らなかったので自己流で勉強しながら何とか出来るようになりました(半年程は無駄にしたでしょうね)。知り
合いに多少の経験のある人がいれば尚助かります。私がここに引っ越してきた時には知人が一人もいなかったので随分大変でした。
溶接が出来ないなら、鉄工所に頼んだ方が早いし正確です。自分で出来る所、出来ない所を良く知れば時間の短縮につながり、また成功につながります。窯を作るには、最低でも、その3倍位の作業場がいりますし、鉄を切ったり加工したりすればそれなりに騒音もします。
窯作りには、時間も体力も要ります。苦労もするし、気を付けないと大怪我をして陶芸が出来なくなる体になる事もあります。
こんなに大変だけど、やっぱり自分の作った窯で作品を焚けた時の喜びは、焼ける事が前提の市販窯と違う喜びを得る事が出来ます。そして、何より自分の思い通りに設計出来る喜びは、やっぱり作った人同士でしか分からない部分はありますね。これまた陶芸と同じです。
ここまで読んでみて、それでも窯を作ってみたいと思われる方は、どうぞ下記へお進み下さい。
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